ルビーの一歩 私たちすべての問題


  • ルビーの一歩 私たちすべての問題/ルビーブリッジズ
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商品の説明

ノーマン・ロックウェルの絵にも描かれた黒人の女の子ルビー・ブリッジズ

著者ルビー・ブリッジズは1954年生まれ。6歳の時、それまで白人専用だった小学校に、初めての黒人生徒として入学しました。 当時の感覚だと「白人しかいなかった小学校に黒人の子が入学してくる」なんてとんでもないことだったのでしょう。 ルビーが毎日登下校する際に、親をはじめとする白人の群衆が、彼女に向かって、怒鳴ったり、叫んだり、脅したり、物を投げつけました。 ルビーの身の安全を確保するために、大統領の命令で4人の連邦保安官が護衛にあたるほどでした。

その護衛は、ルビーが1年生のあいだ、ずっと続いたそうです。

その様子を描いたノーマン・ロックウェルの作品「私たちすべての問題 The Problem We All Live With」(1964)は本書の表紙に使われ、日本語版のサブタイトルにもなっています。

子どもから大人まで年齢を問わずに読んでほしい

この本の原書が出版されたのは、2020年11月。なぜ、このタイミングで20年ぶり2冊目の著書を出したのか? おそらく、2020年5月にジョージ・フロイドが警官に殺されたこと、それにより「Black Lives Matter(黒人の命を粗末にするな)」運動が広がったことがきっかけだったのではないでしょうか。

序文は「この『平和の手紙(letter of peace)』を…」と始まり、本文も「平和のために活動する若者たちへ(To the young peacemakers of America)」という見出しから始まります。 平和を求める若者たち(young peacemakers)への励ましのエールとして書かれているのでしょう。

自分が、白人専用の小学校の初めての黒人生徒だったこと、白人の親たちの非道い仕打ち(それらは写真にも残されていて強い印象を残します)、 黒人の子どもに教えたくないという理由でやめていった教師もいるなか、ルビーのために2,200キロも離れたボストンからやってきてくれた担任のバーバラ・ヘンリー先生のこと。

肌の色が違うだけで、なぜこんなに憎まれなくてはならないのか、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の「肌の色でなく、人格そのものによってその人を判断してください」という教えに思いを巡らせたこと。

この手紙は、過去の話だけではありません。本書の後半は、25年以上にわたり世界中の子どもたちと会話をかわす中で出会った、子どもたちの純粋無垢な魂や愛情や悲しみのこと、 子どもは差別主義者として生まれたのではなく、大人がそれを広めているのだ、お手本を示すのは大人の役割なのだという信念、 今なお繰り返される黒人への暴力のこと、ルビー自身も息子を銃の乱射事件で殺されたことなどが語られます。

しかし、ルビーはポジティブです。キング牧師の「人はだれもが偉大になれます。なぜなら、人はだれもが、だれかのためにつくすことができるからです」さらに「あなたに必要なのは、やさしさに満ちた心だけです」という言葉を引用した後で 「愛しあい、いたわりあう心があれば、わたしたちひとりひとりが持つ独自の個性に、敬意をはらうことができます」と続けます。 ルビーは自分の過去、自分の物語が、読者を動かすきっかけになるかもと言いつつも、一歩目を踏み出すことは簡単ではないとわかっています。 でも、6歳だったルビー・ブリッジズはその一歩を踏み出して未来を動かしました。だからこそ、歴史の中であなたがその一歩を踏み出す「とき」が来たのだと勇気づけて、この手紙は終わります。

写真とキャプションが伝える黒人差別の歴史

この本は見開きの半分が文章(手紙)と写真の説明(キャプション)、もう半分が写真という構成になっています。 写真は文章の説明・補足という役割を超え、文章に書かれていない黒人に対する差別の歴史やそれに抗議する公民権運動、「Black Lives Matter」運動まで扱っています。 文と写真は時に寄り添い、時に離れながら、ルビー個人の体験と黒人全体にとっての歴史的な出来事をクロスオーバーさせています。 歴史的な出来事は写真のキャプションとして書かれています(おかげで本文はずいぶん読みやすくなっています)。キャプションはこの本を理解するためにもぜひ読んでほしいです。

前半の写真は、1960年当時、連邦保安官に囲まれて登下校するルビーの姿や、ルビーに怒りをぶつける白人の母親たちなど、ルビーの身辺で起こったことだけでなく、 1963年のワシントン大行進を歩くキング牧師、人種差別法に従った標識(犬・黒人・メキシコ人の立ち入り禁止、トイレを白人用と有色人種用に分離など)など、黒人差別と公民権運動のこともわかるようにセレクトされています。

後半の写真では、今の子どもたちが「BLACK KIDS MATTER(黒人の子どももだいじ)」「JUSTICE(正義を)」といったプラカードを掲げる姿、 抗議活動をするアフリカ系アメリカ人が放水で痛めつけられている1963年の写真と、 抗議活動の参加者に警官が催涙スプレーをあびせている2020年の写真が対比するように上下に並んでいて、差別主義への抗議活動は終わっていないと伝えています。 しかし、ジョージ・フロイドのデモで抱き合う黒人と白人の若者たちの姿は希望を感じさせます。

私たちを勇気づける「平和の手紙」

これは、ルビー・ブリッジズという黒人女性の物語ではありますが、決して彼女だけの話ではありません。当時の黒人が受けていた人種差別の一面に過ぎないことが写真から伝わってきます。

さらにそれは過去の終わった話ではなく、今なお終わっていない問題です。「黒人に対して何度も何度もくりかえされるおそろしい暴力には、深く心を痛め」、彼女自身も息子を銃乱射事件で失ったにも関わらず、 キング牧師の言葉を引用しながら「世界を癒すのは、愛しあい、いたわりあう心」と説きます。

そしてこの「平和の手紙」の最後は、こわがらないで「あなたのとき(原題:THIS IS YOUR TIME)」がやってきた、なにがあったも心をひとつに、と勇気づけて終わります。

たくさんある中の1枚の写真が私を勇気づけてくれます。 それは、ルビーが入学して数ヶ月後に撮影されたスナップ写真。ルビーは、新しい友達(もちろん白人です)4人と一緒にこっちを向いて笑っています(60年以上前の遠い国のことなのに「よかったね、ルビー、友達ができて」と思ってしまいました)。 子どもたちに憎しみや偏見はない、という彼女の信念はここから来ているのかもしれません。 それと同時に、白人の親全員が、ルビーを罵るために学校の外で待ち構えていたわけではなかったということも、その写真から推察できるのです。

さらに付け加えるなら、1年生のルビーを受け持ったバーバラ・ヘンリー先生の存在も私に希望を与えてくれます。 丸1年、2人しかいない教室で1対1で教えてくれ、2人とも、お互いのために休むわけにはいかないと一度も休まなかったそうです。 学校の外で叫んでいる女性と見た目は同じなのに、内面は全く違っていて、心と心で付き合ってくれた先生のおかげで、ルビーは安心して学校に行くことができ、大事にされていると思えたのです。

思わず手に取りたくなる装丁、少なめの文字数と美しい写真で読みやすい

DVDケースくらいのコンパクトサイズ、表紙には白いワンピースを着た黒人の女の子が登校する様子を描いた印象的なイラスト、イラストの背景になる壁には黒人の蔑称「NIGGER」という落書きと投げつけられたトマトが描かれています。 白が基調の上品な表紙なんですが、「あれ?」「これは何?」と心に引っかかるものがあり、ロックウェルの作品を知らなくても思わず手に取りたくなります。

ページを開くと、見開きの左に文章、右にモノクロ写真というレイアウトがずっと続きます。文字数はそれほど多くなく、文字組みもゆったりしていて、かなルビもふられています。 写真は1960年代当時のルビーの子どもの頃からワシントン大行進のキング牧師から、2020年の「Black Lives Matter」まで、ルビーから見た黒人差別の歴史が、悲惨でありながらも美しく紹介されています。

この本の最大の特長は、この「手に取りやすさ」「読みやすさ」「美しさ」でしょう。この「手紙」は料理(編集)の仕方によっては、暗く重苦しいメッセージの本になった可能性もあります。 しかし、この本は人種差別的な写真や黒人が暴力を受けている写真もありますが、決して重苦しくならずあくまでもポジティブに、希望を見せてくれます。

(スタッフささき)

1960年、6歳のルビーは、ルイジアナ州ニューオリンズの白人専用のウィリアム・フランツ小学校に、初めての黒人生徒として入学しました。 小学校に入学した女の子が、他の子と違うのは肌の色だけ。その時のルビーにはそれが歴史の教科書にのるようなことだとは全くわかっていませんでした・・・。

いまだに世界中からなくならない人種差別という偏見。勇気を出して、人種差別に立ち向かった6歳の少女からの「平和の手紙」。

(出版社サイトより)

商品詳細

著: ルビー・ブリッジズ
訳: 千葉 茂樹
寸法: 18.5×13.5cm
内容: 64ページ
製作: あすなろ書房 (日本)
初版発行日: 2024年01月

商品の仕様(色、材質、形状、パッケージなど)は予告なく変更することがあります。

この記事を書いた人

ささき佐々木隆行

2000年に百町森にジョインしたw古株。2人の息子の子育て中に、テーブルゲームにずいぶんと助けられる。 『絵本の読み聞かせ』のように、『家族でゲーム』を文化として根付かせたいという思いで、毎月1回「家族でゲームの日」を開催。ホームページ、ライブ配信、オンラインイベント、動画編集、ネット・IT関連担当。似顔絵イラストはコイズミチアキ(@koizumichiaki2)さん(スタッフ紹介ページへ

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