知らなかった、ぼくらの戦争


高畑勲さんが恐れているのは流れに「のっかっていく」こと
「どきどき」型でなく「はらはら」型を−と言う意味は?

2018年4月5日、『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』など多くのアニメーション作品を手がけた高畑勲さんが亡くなりました。高畑さんは食べっぷりのよさから親しい人からはパクさんと呼ばれていたようで、「お別れ会」で宮崎駿さんもそう呼んで追悼の言葉を述べたのが印象的でした。 

さて、この本の最終章が高畑さんとの対談。高畑さんは1935年生まれ、この年5月に92歳で亡くなった加古里子さんと対照的に軍国少年ではなかったようです。でも、空襲をからくも逃げおおせた経験、その後一ヶ月半で終戦、先生たちがけろりと変わるのを見て、「絶対的価値はない」と刷り込まれたそうです。中学の時「再軍備が是か非か」という議論が学校でも起こったそうで、その頃世間では「軍備戸締まり論」というのがのが取りざたされ、朝鮮戦争が始まると「警察予備隊」が作られ、それがなし崩し的に「自衛隊」になった。ビナードさんは(言葉の専門家として)「警察力」と呼ぶか「軍事力」と呼ぶかでは全然違うと言います。

高畑さんはアニメなどの表現者として、今のアニメでは流行っているのは「どきどき」型、迫力があって圧倒されるし、身をゆだねれば楽しいが観客を巻き込んでいく(ビナードさんはそれは思考停止に繋がりプロパガンダに利用されると危惧する)。でも、本当は客観的になれて笑える「はらはら」型が良いと言います。宮崎アニメも『天空の城ラピュタ』までは「はらはら」型で笑えたけど、それ以降は…と同僚をチクリ。ちょうどそれは戦中も戦争に距離を置いていた人も、いざとなると流れに「のっかって」いったことに似ているような気がしますね。さらに、高畑さんは意外にも反戦映画は撮っていないと言います。その理由として、被害やひどい目にあった話は反戦にならない、加害の立場や「平和とは何か」を言うことが大事と。意味深い言葉です。冷静に物事を見ようとしていた素晴らしい芸術家・高畑勲さんをが亡くなったことを大変残念に思います。

  • 知らなかった、ぼくらの戦争/アーサー・ビーナート
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学校がで教えない本当の近代史がここに!

あらすじ

絵本も書き、詩も書く、アメリカ出身のアーサー・ビナード(1967年生まれ)が、日本人の太平洋戦争体験者たちを訪ね歩き、戦争の実態と、個人が争いから「生き延びる知恵」を探った本を出した。

1990年に来日し、その後日本人女性(木坂涼)と結婚、今や日本人以上に日本社会に詳しいといわれるビナードだが、日本に来て驚いたことの一つは「戦後○○年」という言い方だそうだ。

アメリカにはそういう言い方はあったとしても意味はない。

まあ、実際、第二次大戦後も、アメリカは200回以上も戦争をしているようだ。

日本はそれも含め、他国や自国の戦争を見て見ぬふりして「平和」と言って来たんじゃないか、それは「優雅な無知」とも言えるのではと釘を刺す。

この本に登場する語り手は、真珠湾攻撃に参加したゼロ戦の元パイロット、大統領令で強制収容所に入れられた日系米人などさまざま。

ビナード自身が受けたアメリカの教育と照らし合わせながら書いているところが、私がかつて読んだ「戦争は悲惨」という本とひと味もふた味もちがう。

戦争は政府のプロパガンダの応酬(それは今も始まっている!)という側面を冷静に見ないと市民はただ巻き込まれるだけだ。

(コプタ通信2017年9月、2018年8月号より 柿田)

商品詳細

編著: アーサー・ビナード
寸法: 19×13cm
内容: 256ページ
製作: 小学館
初版発行日: 2017年03月28日

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