シャイローと歩く秋

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今より少し前のアメリカのウェストバージニア州。６年生の男の子マーティの家の近所には、自分の猟犬を暴力的に扱う男がいます。あるときマーティはこの男の元から逃げ出した犬を家族にも内緒でかくまい、シャイローと名付けて心を通わせます。その後マーティは男とある取引をして、シャイローを自分のものにしました。

ここまでは５年前に翻訳、出版された前作「シャイローがきた夏」での出来事です。

続編にあたる本作では、マーティにシャイローを譲ったあと、頻繁に酔っぱらうようになってトラックを暴走させたり、銃口を向けたりしてくる男（ジャドという名です）との関わりが主軸になります。

マーティはシャイローが轢かれたり撃たれたりすることを心配し、ジャドと交友的に話し合おうとしますがうまくいきません。けれど、ある事件が起きて、ジャドにも変化が…。

マーティの一人称で語られる物語は、時にユーモア交えた語り口の中に、動物や児童の虐待、銃社会、うわさと真実など様々なテーマが織り込まれていて深みがあります。これだけでも読む価値ありですが、それらが読後じわじわ沁みてくる前、読んでいる最中はマーティの不安や喜びが読み手に伝染するような臨場感でぐいぐい引き込まれるのです！

人にも動物にもあたたかく、まっすぐな心で向き合うマーティのひたむきな姿は、私が最近忘れていた、善なるものへの信頼を思い出させてくれました。久々に味わった「まっとう」な児童文学作品。本作だけでも十分楽しめますが、前作と合わせるとさらに味わい深くなります。ご堪能ください。

（コプタ通信2020年2月号より　つきちゃんこと築山真希子）