その年、わたしは嘘をおぼえた

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1943年のアメリカ、語り手は丘陵地帯の農場で暮らす11歳の少女アナベル。

町から「矯正不能」として祖父母の元へ送られてきた年上の少女ベティは、比較的恵まれた暮らし向きのアナベルに目をつけ、「何か持ってこないと弟たちをひどい目に合わせる」と言います。断ったアナベルは殴られ、森の小道に仕掛けられた、やすりをかけて切れ味を鋭くした針金で弟が怪我をする事件も！

ところで、アナベルの家の近くには第一次世界大戦で心を病んでしまったトビーという放浪者が住みついています。アナベル一家は、偏見なく彼に接していますが、周囲の人々は彼を警戒しており、何者かがドイツ系の村人に石を投げると、トビーの仕業だとうわさします。アナベルは石を投げたのはベティと彼女の男友達だと突き止めますが、そんなある日ベティが行方不明に。

変質者として疑われたのはトビー。程なくベティは発見されますが、彼女の嘘のせいでトビーはさらに窮地に立たされます。アナベルはトビーをかくまい、彼の無実を証明するために知恵をしぼり…。

全編を通して不穏な空気をはらんだ緊張感のある作品。じんわりとしたこわさと、人の持つ複雑さを味わい、時代や戦争など様々なことに思いめぐらせるひとときを…。

読みやすい作品ですが、結末を受け入れることができる、中学生以上におすすめです。

（コプタ通信2019年6月号より　つきちゃんこと築山真希子）