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その12:渋いぜ、Bergmann!

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私が、キュ〜ンとやられてしまったものシリーズ。今回は「Bergmann=鉱夫」のお話です。

2000年に初めてザイフェンを訪れたとき、ルームメイトがおもしろい場所に案内してくれました。

その日は、ドイツの冬らしいどんより暗い空。民家の横を通りぬけ、しばらく歩くと、左の方へそれる小さな道。そこを降りていくと、急に視界が開けました。すり鉢状になったところに、舞台らしき石組。その前には、たくさんの木製の椅子。

ここは、かつて鉱山だった場所で、今は野外劇場となっていました。ちょうど舞台の袖あたりに、鉱夫たちの仕事を見張るための見張り小屋「ROTE GRUBE」(直訳すると、赤い鉱山、鉱坑)が残されていました。立て看板を見ると、1856年に建てられた古いもの。そして、舞台の反対側には、鉱山の入り口跡がありました。

15世紀より、この地で多くの鉱夫たちが命を賭けて家族を守るために働いていたのだ、と思うと感慨深いものがありました。が、あまりの静けさにちょっと怖くもなりました。


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その2年後、私はヴォルフガング・ヴェルナーさんの工房で、初めて鉱夫がモデルの工芸品を2点購入しました。

1つは、ハンドルを回すとトントントン...みたいな音を出す「砕鉱機」。採掘した銀や錫を細かくくだく様子を再現したもので、水車が回転し、粉砕する棒が上下します。その時にトントントン、と音がする地味なもの。


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もう一点は、チントンテン...みたいな音を出す「カウエ」(小さな坑道の入り口を覆う小屋のこと)。こちらは、錫を運ぶ人形と、ハンマーを持つ人形が回転するしくみ。一見するとオルゴールのようですが、これらは二つともクリンパーケストヒェン(Klimperkaestchen)といい、オルゴールの原型です。写真を見ておわかりになると思いますが、ほんとなんて地味な工芸品でしょう。いくら歴史的なモチーフとはいえ、たいていの日本人は買わないでしょうね...

鉱夫をモチーフにした工芸品で代表的なのは、ヴォルフガングさんの父であるヴァルター・ヴェルナー工房のフィギュアです。他にあげるとしたら、やはりフュヒトナー工房のくるみわり人形、クラウス・メルテン工房の煙だし人形でしょうか... 

エルツ山地の工芸品が200年以上も作り続けられているのは、その昔、鉱夫たちが、ハンマーを、カービングナイフやバイト(ライフェンドレーン工法の時使う木を削る刃物)に持ち替えてくれたおかげです。だから私は、渋めのBergmannたちを、ちょっとひいき目にみてしまうのです。(治井紀子)

□ヴォルフガング・ヴェルナーのからくりおもちゃ http://www.hyakuchomori.co.jp/life/kogei/erzgebirge/wolfgang.html