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2007年6月30日

その9 晴れでも雨でも楽しめる「お天気ハウス」

otenki_house.jpgエルツ山地の工芸品で私のお気に入りの一つ、「お天気ハウス」。かわいいお家の玄関に、男の人と女の人が立っています。晴れた日には男の人、雨の日には女の人が、玄関先に出てきます。

馬の尾の伸縮を利用してつくられたもので、「簡易湿度計」みたいなもの。でもなぜ、女の人が「雨の日」に出てくる???湿度が高いと確かに不快な気分になりますが、それは男女一緒のはずなのに。

ザイフェンで作られているキャンドルスタンドに、「天使と鉱夫」というものがあります。

昔、鉱山で働く夫を無事に帰宅することを願いながら、妻は窓辺に置いたロウソク台に灯りをともしました。疲れた体を引きずりながら真っ暗な夜道を歩く夫は、我が家の窓辺に灯りがともっているのを見て、安堵する。敬謙な信者だった夫は、妻のことを真っ暗な鉱道の中で一日働く自分たちを明るく導いてくれる「天使」のような存在だと考え、キャンドルスタンドを作りました。その後、自分をモデルにした「鉱夫」の人形を横に並べられるようになりました。

「お天気ハウス」において、天使のような妻は、夫を晴の舞台に立たせるために、あえて、ジメジメした湿度の高い雨の日に自分が表に出ることを選んだのではと、私は考えます。
  
残念ながら「お天気ハウス」については、エルツ山地の工芸品について書かれた本を見ても、ネットで検索しても資料はあまりみあたらず、これが作られるようになったいきさつはよくわかりません。もし詳しい方がこのメルマガを読まれたら、ぜひご一報ください。

ちなみに、くるみ割り人形の父と呼ばれているWilhelm Friedrich Fuechtner(1844〜1923年)は「天使と鉱夫」のキャンドルスタンドの基礎となるものを最初に作った職人でもあります。

□キャンドルスタンド
http://www.hyakuchomori.co.jp/life/kogei/candle_stand/index.html

□フュヒトナー家のくるみ割り人形
http://www.hyakuchomori.co.jp/life/kogei/fuechtner/fuechtner_top.shtml

ドイツゲームが続々日本語化

百町森で扱っているボードゲームやカードゲームのほとんどはドイツ製です。ゲーム市場をここまで引っ張ってきた国ですから、メーカー、作家、遊び手が非常に成熟していて大きな市場になっています。ドイツで発売される新作ゲームの数は、年に200とも言われていますし、その一方で、長く遊ばれ続けているロングセラー/名作と呼ばれるゲームもたくさんあります。

ここ最近になって、それらのドイツゲームが日本語化されるようになってきました。パッケージが日本語だと敷居が低いというか、わかりやすくていいですよね。百町森では、こういった日本語化されたゲームも積極的にお薦めしていきたいと思います。

ニムト(原題:6 nimmt! / 別名:6ニムト、シックスニムト)税込1,000円
だれでも楽しめるカードゲームの名作
http://www.hyakuchomori.co.jp/toy/item_age7/pages/amigo_6nimmt.shtml

ごきぶりポーカー(原題:Kakerlaken Poker / 別名:カーケラーケンポーカー)税込1,800円
虚実が入り乱れた腹の探り合い
http://www.hyakuchomori.co.jp/toy/game/dmg/pages/dmg_40829.html

ハリガリ(原題:Halli Galli)税込2,730円
大人も夢中になるエキサイティングなゲーム
http://www.hyakuchomori.co.jp/toy/item_game/pages/halli_galli.shtml

「ムーミン谷の夏まつり」読了

去年の夏頃からずっと読んできたムーミンのシリーズ。5冊目の「ムーミン谷の夏まつり」を4月ごろ、6冊目の「ムーミン谷の冬」を一昨日に読み終えました。

□ムーミン、トーベ・ヤンソンの本
http://www.hyakuchomori.co.jp/book/moomin/bk_moomin.html

長男(小6)は、自分で先に読んでしまうので、主に次男(小3)のために読んでやるのですが、夜は私の帰りが遅いことと、仮に読んでやっても、すぐに眠ってしまうので、ほとんど先に進みません。そこで、柿田のやり方を真似して、朝食の時に読んでやっています。行儀が悪いとは思いながらも、この年齢になれば話を聞きながら食べるということもできるので、やっている訳です。でもそのおかげで、こうやって少しずつでも物語を読んでやることができます。

「ムーミン谷の夏まつり」は、大洪水に見舞われたムーミン一家の物語です。

みんなは、近くを流れてきた大きな家に乗り移って、そこで暮らし始めます。しかし、ムーミントロールとスノークのおじょうさんは、木の上に置いてきぼりにされ、ちびのミイも家から落ちて水に流されてしまいます。残された家族たちは、悲しみに沈みますが、今暮らしている大きな家が劇場だったことを知り、そこでお芝居をすることにします。そうすれば、ムーミントロールたちにその噂が伝わって、再会できると考えたからです。

途中、スナフキンがちびのミイを見つけたり、24人の森の子どもたちの面倒をみることになったり、ムーミンたち3人(フィリフヨンカという娘と友達になるのです)は、ぬれぎぬを着せられて牢屋にぶちこまれたり、ムーミンパパの書いた脚本をみなが好き勝手にいじくりまわしてハチャメチャになってしまったり、といろんなことが次々と起こりますが、最後は狙いどおり、ムーミンたちの乗った船と、スナフキンやちびのミイが乗った船が、公演中の劇場の前にやってきます(大洪水の後なので、劇場も水に浮かんでいるし、お客さんも船で見にくるのです)。

ハチャメチャな素人芝居の最中に、ちびのミイとスナフキンが割り込んで再会を喜び、みんなでコーヒーを飲む頃には、もとの芝居は完全にどこかへ飛んでいってしまいます。でも観客はそれを喜んでいます。お客さんも舞台に上がって芝居に参加して、どんどんと楽しくなっていきます。そして、ムーミントロールとの再会。そのあともドタバタは続きますが、最後は水が引いたムーミン谷の家にみんなが戻ってきます。ムーミン家の住人たちは、自分の家にいるということをしみじみと味わいます。登場人物たちは、最初よりも幸せになって、この物語は終わります。

この物語にも、ほかのムーミンの物語と同様、いろいろ困ったことが起こったり、幸せでない人物が登場します。劣等感のかたまりのようなミーサ、親類に愛されず友達もいないフィリフヨンカ、24人の子どもの面倒をみることになったスナフキンは困り果て、ムーミンとスノークのおじょうさんは、家に帰れないどころか牢屋に入れられてしまいます。このようにこんがらがった糸が、トーベ・ヤンソンさんの魔法のような手で、見事にクライマックスでほどけ、人々は以前よりも幸せになって、自分のいるべき場所に戻ります。この最後の結末のつけ方が、本当に上手いと思います。物語を読み終えて、ほわ〜っとした幸せな気分にさせてくれます。

「ムーミン谷の冬」読了

去年の夏頃からずっと読んできたムーミンのシリーズ。5冊目の「ムーミン谷の夏まつり」を4月ごろ、6冊目の「ムーミン谷の冬」を一昨日に読み終えました。

□ムーミン、トーベ・ヤンソンの本
http://www.hyakuchomori.co.jp/book/moomin/bk_moomin.html

「ムーミン谷の冬」は、冬眠中に目を覚ましてしまったムーミントロールのお話です。

家族はみんな眠ってしまっているので、彼は一人で冬という季節を過ごすことになります。でも、実は一人ぽっちという訳ではなかったんです。冬にしか出会えない生き物たちー彼らの多くは姿を見せたがらない恥ずかしがりやーや、ムーミン家の水あび小屋に暮らすおしゃまさん(トゥティッキ)、オオカミに憧れるイヌのめそめそくん、さらには偶然目を覚ましたちびのミイまでもが、ムーミントロールと一緒に冬を過ごします。

彼は淋しさや、子リスの死、冬という季節への怒り、ムーミン家を守る責任、迷惑なほど善意を持ち合わせたヘムレンさんをめぐる対立、などなどいろいろなことを体験します。その時その時を精いっぱい考えて行動します。

春の到来を告げる吹雪の中で、ムーミントロールはようやく冬を受け入れます。同時にヘムレンさんを受け入れ、ヘムレンさんは自分を好いてくれるサロメちゃんを受け入れ、イヌのめそめそくんは、イヌであることを受け入れます。

以前は待ち遠しかった家族の目覚めを今ではおそれながらも、ムーミントロールは一人で冬から春への季節の変化を体いっぱい受け止めます。最初の頃の淋しさはもう感じていません。ちびのミイは相変わらず、自分が気に入ったスケートをしているようです。彼女は最初から一人で楽しむすべを知っていたわけです。

やがて、ムーミンママが目を覚まし、スノークのおじょうさんも目を覚まします。他人との距離の取り方、自分一人で楽しむすべを身に付けた彼は少し大人になっています。じわりと余韻が残るラストシーンも見事です。