3.独自のゲーム開発について

「はげたかのえじき」は、既にあったゲームのメカニズム(構造)の一例である。いくつかの新聞やPoeppel Revue誌には、それがDestinoのようだと書かれていた。私はそれが非常に腹立たしかった。なぜなら、Destinoと同じ年に発表した「トップシークレット」の中に、すでに同じメカニズムがあるからである。それは、非常に古いゲームの原理で、私は既に戦争中にそれに遭遇していた。インドの第5連隊にいた時のことである。

当時そこでは、お金のために珍しいゲームが行われていた。ギャンブルではなかったので、そのゲームは許されていた。数字が記入された色紙を用いて行われた。各々のパーティーは別の色であった。この紙片をお金を出して買わなければならなかった。そして、その後切手のように細かく引きちぎられた。それが無用に複雑だったので、当時私はあまり好きではなかった。このゲームは胴元にとっては、非常に利益が上がったものと思われた。胴元はその紙片を売っただけでなく、勝負の決着がつかなければ、その分儲かった。そのゲームは英語でしたわけではないので、正しく理解していないかもしれないが。

しかしこのゲームの原理は「はげたかのえじき」のものと同じである。人はこの原理に繰り返し出会うでしょう。これはとても良いので、私はもっと使うつもりである。

このゲームのメカニズムが純粋な形で現れている「はげたかのえじき」はとにかく成功している。フィンランド版さえあるほどだ。まもなくイタリア版も出るが、ただし、別の動物になる。はげたかの代わりに毛深くて腹を空かしたオオカミがいる。そして、ネズミはピンクのコブタに取り替えられた。

他の例として、Generalowskyがある。最初のバージョンである「カンガルー」の方が良いゲームだったと多くの人が言った。私も全く同じ考えである。Generalowskyは非常に長い歴史を持っている。それどころか、それはかつてはアクションゲームでもあった。私は再び「カンガルー」のアイデアを呼び戻すつもりだが、その時はたぶん全然違うテーマになるだろう。「カンガルー」にはひとつ大きな欠点−計算が必要なので小さい子向きでなく、子どもたちを閉め出したーがあった。なのにテーマは子ども向けだったのだから、それは大間違いだった。そのゲームを私はもともとTOP DOG(勝ち犬)と読んでいた。すべてのものを制圧し、そして勝ち取るのがTOP DOGである。TOP DOGがゲームをどう進めるかを指示したので、そのアイデアは当然正しかった。私はまったく違うテーマにして、大人用のゲームを作りたい。

さらに同類のメカニズムを持つ他のゲームがある。例えば私が大好きな「SPY & SPY」(というのも、私はMADマガジンを読むのがとても好きなので)は、先へ進めるためのはっきりとしたメカニズムを持っている。カードの山があって、次にどのカードを引くのかは、最初のうちは全く運による。カードは、たった1回だけ混ぜられ、引かれたカードは再び山の下に置かれる。そのため、これら下に置かれたカードが何であるかは、しばらくするとわかってしまう。特に、上から1〜3枚目から選んで引くことができるので、このゲームは運で決まるゲームではなくなる。私がヨハン・リュッティンガーと一緒に作った「トゥイードルダム」にも同じことが起きている。そして、決してこれで終わりではない。この原理はとても良く面白いものなので、私はもう一度使うつもりである。なぜいけないのか?サイコロだって新しいゲームではない!なぜ人は良いメカニズムをもう一度使おうとしないのか、私には全くわからない。

訳注

「はげたかのえじき」
Hols der Geier(Ravensburger,1988)

Destino(Garret J. Donner,Spear,1986)

「トップシークレット」
Top Secret(Jambo,1985)

Generalowsky(International Team,1987)

「カンガルー」
Känguruch(Ravensburger,1974)
は、このインタビューの翌々年
「冷たい料理の熱い戦い」
Die heiße Schlacht am kalten Buffet(Ravensburger,1990)
としてリメイクされ、さらに
「ウミガメの島」
Mahe(Franjos,2014)

として現在も発売中です。

この段落と次の段落は、ゲームそのものを知らないので、的外れの訳かもしれません。

Spion & Spion(MB,1986)

MADマガジンとスパイの間にどんな関係があるのかは不明です(笑)。

ヨハン・リュッティンガー
(Johann Rüttinger)
1947年生まれ。グラフィック・アーティストとして学んだ後、フリーランスとしてノリス社の商品開発に携わり、ゲーム作家となる。代表作は
「3人の魔術師」
Die Drei Magier(Noris-Spiel,1985)、
「マイティーマックス」
Max Muemmelmann(Ravensburger,1988)など。1994年にはドライマギア社(Drei Magier Spiele)を設立。ランドルフ氏の作品を精力的に商品化した。

2008年7月1日にドライマギア社を売却し、リュッティンガー、カプラー夫妻とイラストレーターのロルフ・フォークト氏の3人で「ドライハーゼン社」を設立し現在に至る。

「トゥイードルダム」
Twiddeldum(Johann Rüttinger,Noris-Spiel,1987)

補足(2017年5月3日)

このインタビューのドイツ語原文(Alex Randolph im Gespraech)はspielbox-onlineに掲載されていましたが、現在では削除されています。アレックス・ランドルフ氏ご自身から承諾を得て翻訳を掲載しています。

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