2019年2月に書かれたブログ

その方は種本弥生子さん(81歳)。

これまでも孫のためにいくつか絵本作りをしてきましたが、75歳になった頃、これまで趣味の手芸で培った手仕事の知識と技術を生かし、布絵本作りにとりかかりました。

お話(ストーリー)は、作者の山梨県富士吉田での子どものころの原体験から生まれました。

布生地やフエルト、人形用の部品を購入し、何カ月もかかって試作品を製作しました。

出来上がった試作品に孫たちは大喜びして布絵本を読みました。

「こんなに喜んでくれるなら、もっと作ろう」と種本さんは思いましたが、一人でたくさん作ることはできず困っていたところ、親族の企業が宮城県登米市で、東日本大震災後に被災者を応援するプロジェクトとして、被災者が仮設住宅で編んで製作した「編みたわし」を販売していることに気が付きました。

そこで種本さんは、編みたわしを企画した、宮城県登米市にあるNPO「コンテナおおあみ」に、お母さんたちを訪ねてみることにしました。

「コンテナおおあみ」では、編みたわしをデザイン・企画する足立佳代子さんを中心に毎週お母さんたちが集まって、編みたわしを水揚げしています。(ここでは、製作することを、水揚げする、と言います。)

(ちなみに、この編みたわしは「編んだもんだら」とネーミングされてすでに市販されています。タコや、ホタテ、ヒラメ、サンマ、ウニなど三陸の海で取れる海産物をモチーフにデザインされた編みたわしで、とても可愛く作ってあります。編みたわしを製作することを水揚げというのはここから来ています。ちなみに百町森では編みたわしは扱っていません。)

日々編みたわしを編んでいる6人のお母さんたちも、布絵本の楽しさに魅かれて、制作を引き受けてくれることに。

でも、その後が大変、いつもは器用に編みたわしを毛糸で編んでいますが、布絵本は編みたわしとは違う難しさがあって、なかなか上手に絵本が出来ません。

種本さんは何度も東北に製作指導に行きました。

そうして3年の歳月をかけ、『さとやま布絵本』が完成しました。

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さとやま絵本「いっしょにあそぼ」

種本弥生子/著 コンテナおおあみ製作

本体27,000円+税(4冊セットバラ売り不可)   閉じた時26×25cm

作者が東日本大震災後に被災者を応援するプロジェクトと連携して作った春夏秋冬全4冊、各見開き1ページの布絵本。副読本付き。

春は、ニワトリのおかあさんとひよこ達。おかあさんの白い羽の下に黄色いフェルトでできたヒヨコが隠れていて、ヒヨコたちを動かすことができます。

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夏は、七夕の織姫と彦星。笹に短冊を掛けることができたり、織姫、彦星を移動させたりできます。

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秋は、山のリスとどんぐり。ムササビやリスやどんぐりを動かせます。

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冬は、かまくらで遊ぶ子とウサギ。雪にウサギが4匹隠れています。カマクラで男の子と女の子の人形を使い遊べます。

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販売は百町森が作者から頼まれてしています。

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2020/02/05 代表 柿田友広

百町森40周年のごあいさつ

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「人間が一生懸命働く時、お金はその一部に過ぎない」

これは私が最近出会った言葉、昨年亡くなった日本研究家ロナルド・ドーア氏の言ったことだそうです。これを知った時、百町森が40年続けて来られたのもそういうことだ!と思いました。(絵は40年前に私が描いたお店のイメージ)

最近、百町森のおもちゃや絵本を紹介したチラシの写真をInstagramに上げ、「商業主義と一線を画している」と評価してくださる方がいました。確かに、お金や商業主義と縁遠いというか(笑)、未来の社会を見つめながら仕事をしているようなところが百町森にはあります。(こう言ってしまうと照れますが・・・)

子どもが育つ環境を整えるお手伝いをしたいというのが百町森のビジョンですが、思えばそのために結構押しつけがましい売り方をずっとしてきました。本でいえば、子どもに新刊は必要ない、ロングセラーが大事でそれを自分で読ませるのでなく読んであげてとか。おもちゃでいえば、キャラクターの付いたもの、暴力的なもの、使い捨てのもの、電動のもの…ではなく、自然の原理がわかる五感を育むものから与えてと言ってきました。

また、レジ袋を廃止しお客さんにマイバッグを持ってきてと言ったり、トイレットペーパーを古紙再生のものにしたり、通販の発送の際もリユースの段ボール箱を使ったり・・・、環境への配慮も早くから取り組んできました。しかし、最近、こうした売り方を「アイデンティティ・マーケティング」とよんで最先端の店もしていることを知り、胸をなで下ろした次第です。

また、百町森はイベントとして年に一度「保育・家庭教育セミナー」、さらに小さなイベントを数々開催したり、プレイルーム(25年前からはじめましたが、これを子育て支援の先駆けと言って下さる人もいました。)を併設したり、独自に作っているウェブサイトも商品を売るだけでない、物に対する考えをいれたりと、日を追うごとに単なる小売店という枠を超えた事業になって来ました。わずかではありますが、売上の一部を被災地支援に使わせてい頂いてもいます。

そうした中で、自宅や職場と違う、学んだり情報交換ができる、子どもはもちろん大人にも心地よい居場所になるよう努めてきました。そんな店作りが功を奏してか、最近は百町森に平日も土日も大勢の方が来店してくれ、プレイオンの利用者も増え、根強いファンが増えてきたように思います。子育て中の親御さんだけでなく、以前は少なかった小・中学生や、保育や教育に関わる方も大勢みえるようになりました。

「色んな人が集まって来るコミュニティ、そんな中から文化が生まれることもあるかもしれない。」

これは私が40年前にどんなお店にしたいか漠然と考えていたことですが、スタッフに恵まれ、いろいろなアイデアを取り入れ、ようやく気負わずこうしたことができるお店になってきたのかなぁと最近思います。

百町森は3月1日で40周年を迎えます。これまで支えてくれたすべての皆さんに感謝すると共に、これからも多くの皆さんにご愛顧いただけるよう努力してまいります。

2019/02/01 代表 柿田友広

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