アートアニメは楽しいぞ
アニメーションと言うと、「千と千尋の神隠し」などの商業アニメを思い浮かべる方が多いと思います。でも、アニメーションという言葉はもともと「アニミズム」からきたもの。本来生命を持たない紙や人形などを一コマずつフィルムに撮り、映写した時、それらが動いて見える・・・という手法を持つ映画全般をアニメーションと呼びます。日本は、天才宮崎駿の出現で商業アニメが非常に盛んです。海外でも評価が高く、日本製アニメは「ジャパニメーション」と呼ばれていたりします。
さて、そんな時代の流れとは別次元で私が大好きなアニメ作品群があります。それは、ちょうど絵本作家が一冊の絵本を書き上げるように、作り手が時間と手間をかけ、ごく少人数で作り上げる個人(プライベート)アニメと言われる作品たちです。商業アニメと比べ知名度もなく、ビデオソフトもすぐ廃番になりがちなのですが、このプライベート・アニメの数々が近頃DVDソフトになってよみがえっています。ウレシ〜! (TVアニメや劇場アニメと区別するためのプライベートアニメという言葉も、昨今ではアートアニメと呼ばれているみたい。ま、いっか・・・。) 『母の友』で「そしてアニメの日々」を連載したのはもう8年も前のこと。懐かしい!(この時の連載全12回はいずれ百町森ホームページに掲載する予定)
さあ、今よみがえる名作のうち、今回は厳選して、6作品をご紹介します。
(相沢康夫)
|
|||
![]() 原作/レイモンド・ブリッグズ、32分
|
全編、色鉛筆の絵が動く。空を飛ぶシーンの気持ち良さで、ブリッグズの原作を超えた・・・かもしれません。音楽もいい。 我が家で最も愛されたアニメで、初代テープは擦り切れてしまいました。 |
![]() すてきな三にんぐみ 原作/トミ・ウンゲラー、全4話、28分
|
製作したウェストン・ウッズ社の、原作に極めて忠実という姿勢が素晴らしい!「すてきな三にんぐみ」のアカペラ擬音が楽しい。原作者ウンゲラーがアニメ製作に深くかかわっただけあって、アニメとしての完成度もとても高いです。 |
|
|||
![]() 監督/ユーリ・ノルシュテイン、全8作品、98分
|
ロシアの切り紙アニメです。ノルシュテインは私の世界一好きなアニメーター。特に「霧につつまれたハリネズミ」には、感涙、感涙、また感涙。 福音館の絵本はこのアニメから生まれました。 |
![]() フレデリック・バック作品集 監督/フレデリック・バック、全6作品 、100分 |
名作「木を植えた男」と「大いなる河の流れ」が両方とも入ってるなんてズルイ・・・と私は思いました。(私の所有しているLDは2枚別売でした)文句なくオススメ。長編2作は小学生高学年位から。私の一押し作品は、「イリュージョン」。下にバック自身の描いた絵本あります。 |
|
|||
![]() 監督/ロマン・カチャーノフ、全4話、64分
|
ロシアの人形アニメ。とにかくかわいい! 全体に流れるなにかモノ悲しいこのフンイキは何?と思いつつ、少し優しい気持ちになっていたら、あなたはもうハマっているでしょう。 下欄に原作あります。 |
![]() 川本喜八郎作品集 監督/川本喜八郎、全11作品、151分
|
世界に誇る日本の人形アニメ作家、川本喜八郎。チェコで学び、日本の伝統美を重んじた完成度の高い総合芸術です。特に岸田今日子原作・語りの「いばら姫または眠り姫」が私は好きですね。 〈注〉大人向きです! |
関連書籍 |
|||
![]() 新訳チェブラーシュカ エドゥアルド・ウスペンスキー作、タチヤーナ・ウスヴァイスカヤ絵、児島宏子訳、A5判、152p
|
アニメ「チェブラーシカ」の原作が、ノルシュテインさんの弟子でもあるタチヤーナさんの挿絵と児島宏子さんの新訳で全く新しい本に生まれ変わりました。
お話はアニメの第1話に相当しますが、登場人物やエピソードも多く、読み応えがあります。小学校中学年くらいから。 タチヤーナさんの絵はとっても可愛く、登場人物たちはアニメの雰囲気をうまく生かしています。 |
![]() アートアニメーションの素晴らしき世界 B4判、143p
|
アートアニメーションの歴史から、有名な作家の紹介まで、この世界の概観が見渡せる好著。
読み応えのある濃い内容です。 |
|
|||
![]() ユーリー・ノルシュテイン、セルゲイ・コズロフ作、フランチェスカ・ヤルブーソヴァ絵、児島宏子訳、31x22cm、40p
|
短編アニメの傑作「霧につつまれたハリネズミ」が絵本になりました。絵を描いているのは、ノルシュテイン作品の美術監督で、私生活のパートナーでもあるフランチェスカ・ヤルブーソヴァ。幻想的で美しく、そしてはりねずみの心の動きをうまくとらえています。 | ![]() アオサギとツル ユーリー・ノルシュテイン作、フランチェスカ・ヤルブーソヴァ絵、児島宏子訳、22x15.5cm、32p
|
短編アニメ「アオサギとツル」の絵本化です。絵はフランチェスカ・ヤルブーソヴァ。ロシア語原文も添えられた味わい深い一冊。 |
|
|||
![]() クラック! ギレーン=パケン・バック文、フレデリック・バック絵、山下明生訳、27x24cm、32p
|
ロッキングチェアの一生を通して、ある一家の喜びや悲しみ、また世界の移り変わりまでもを描いています。
アニメをもとに、フレデリック・バック自身が絵を書き下ろし、夫人のギレーン=パケン・バックが文を付けました。 |
![]() 木を植えた男 ジャン・ジオノ作、フレデリック・バック絵、寺岡襄訳、22x29cm、48p
|
ドングリを植え続ける一人の老人の姿が淡々と描かれています。人と自然の共生について考えてほしい、それがバックの願いなのでしょう。
アニメをもとに、バック自身が絵を書き下ろしました。 |
|
|||
![]() 大いなる河の流れ フレデリック・バック作、寺岡襄訳、21.5x19cm、44p
|
バックの住むモントリオールを流れるセント・ローレンス川は、先住民に「マグトゴーグ(大いなる河の流れ)」と呼ばれていました。
自然の豊かな恵み、ヨーロッパ人の定住、争い、文明の発展による汚染などが物語られます。 |
||
|