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日本経済新聞 1998年7月13日朝刊 文化欄

創作積み木地球を回る

「子どもの心はぐくむ作品」目標に世界挑戦    相沢康夫

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 積み木のおもちゃと言えば、国際的に技術、品質が高いのはドイツやスイスを中心としたヨーロッパ製品だろう。誕生の地がドイツだけあって十九世紀からずっと同じ型のものが生産されている一方、芸術的な創作積み木も続々と生み出されている。それらは言葉の壁を超えて、各国の子供たち、大人にも受け入れられている。
 テレビゲーム機をはじめアニメグッズなど、世界のおもちゃ文化に大攻勢をかけている日本製も、積み木など木のぬくもりのする伝統的なおもちゃについては国際的普遍性でまだ及ばない。
 私は90年から、そのヨーロッパでの創作おもちゃのデザインに商売っ気抜きで挑戦している。野球の大リーグで自分の腕を試す、日本人選手と同じ志のつもりである。

必要な芸術性・理論性
 スイスのバーゼル市近くに「ネフ社」というおもちゃメーカーがある。従業員20〜30人の中小企業だが、実はここがおもちゃ創作者あこがれの地で、毎年各国から新作のアイデアが何百、何千と寄せられる。厳しい審査を経て採用される新作は毎年五〜六点、全種合わせても百点足らずである。一種類の生産量も初回で千個くらいだ。
 それらは世界の好事家の垂涎(すいぜん)の的であり、英米では大学の数学研究室にさりげなく置いてあったりもする。今年の「ネフ」の最新カタログにはドイツ、スイス、北欧の作者によるものがほとんどを占め、日本人はわずか四人だけだった。私は最近、四作目が入選した。
 積み木の創作おもちゃに必要なのは、子供が組み立てて美しいと感じられる芸術性と、ピタゴラスの定理を知らなくても角度や長さが正確に出来上がる論理性、それに独創性が要求される。もちろん何年間遊んでも、飽きが来ないことが一番だ。
 私の作品の一つがV字形のブロック12個を赤、青、黄色に分けて一つの立体形を作っていくもので「ヴィボ」と名付けた。二歳くらいから興味を持って遊んでもらえる。組み方は300パターン以上あり、大人にも十分楽しんでもらえる。
 もう少し高い年齢が対象なのが「アイソモ」。濃紺、青、ライトブルー、白の三角とひし形のパーツを、六角プレートに並べることで、立体的な図形を平面上に作るおもちゃである。パーツは48個で埋まるが、余分も入れて130個ある。濃淡のあるひし形を三つくっつけると、立方体に見えるところが発想の元。

積極的な国際交流を
 私がおもちゃの世界に入ったのは10年前。今も幼稚園や保育所を回ってのセールスを続けているが、新作おもちゃのアイデアはそんな時に生まれる。家に帰って方眼紙に書いて形状や個数を詰めていく。ブロックは多すぎては煩雑になり、少なすぎてはバリエーションが単調で奥深さが出てこない。
 設計図ができると知り合いの木工所に頼み、試作品を作る。はじめに我が家の三人の子供に遊んでもらい、様子を見る。さらに修正を加えて、ネフ社に英語の説明書と組み合わせパターンの写真を約100枚送って審査を待つ。おもちゃ創作の世界で避けられないのが類似作品の問題だ。このため、自分の工房には他人を絶対入れない、という人も多いが、私は逆で、世界のデザイナー仲間との交流は大切にしたいと考えている。
 93年には今世紀最高のおもちゃ作家、との評価があるP・クラーセン氏にスイスまで会いにいったこともある。各国ともおもちゃ創作専業の人は少なく、建築家や教育者が多い。クラーセン氏は数学者だ。短い時間だったが創作の苦しみやコツなどを通訳を通して聞き、今後の作品づくりに多大なヒントになった。

バンコクで初の個展
 私の初めての個展は昨年6月のバンコクにおいてである。国立のチュラロンコン大学芸術学部の創立80周年記念イベントで、30点の作品を展示した。また「マイ・デザイン・ポリシー」という題の講演も行った。国内の展示会はその後で今年2月、東京の銀座で開いた。
 知育などの点で積み木などのおもちゃが見直されてきている。ただし、積み木の面にひらがなやアルファベットを書いて覚えさせようとする試みは、やや短絡的ではないか。
 まず子供が自主的に手にとって創造性を発揮できるおもちゃの創作が必要ではないか。こうした点で、日本もアジア全体もまだまだ改善の余地がある。最近はそうした気持ちで新作に取り組んでいる。(あいざわ・やすお=絵本・玩具販売店勤務)

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