トイメーカーを訪ねる旅2004 その5

ネフ社

さあいよいよ私的には、今回の旅行のメインとなるネフ社の工場見学です!

ネフ社は2002年引越しをしました。前の工場はツァイニンゲンという村にあり、私もそこは訪問した事があったのですが、新工場は初めてで、もうワクワクドキドキです。

ネフ社の事は百町森のお客様には今さら解説不要かもしれませんが、ざっと紹介しておきましょう。ネフ・スピールのデザインで知られるクルト・ネフによって、1960年に設立されました(前身となる家具インテリアのネフ社の創設は、更にさかのぼる事6年前ですが)。美しさと精度を持って、木製玩具メーカーのトップをゆく会社です。代表となる製品も「ネフ・スピール」の他に「キュービックス」「セラ」「アングーラ」「ダイアモンド」等、天才クラーセンの一連の作品でおなじみですね。かくいう私も「ヴィボ」「アレーナ」等の作品を今も作っていただいております。

私達を迎えて下さったのは、創設者クルト・ネフ氏!他に(残念ながら現社長は不在だったのですが)工場長や、出荷責任者の方々でした。

(写真左より)ホフマンさん(以前ネフさんがやっていたショップ「プレイオン」で10年働いた後こちらで働いている)、シュミットさん(輸出関係)、フェルバーさん(工場長)、ルーティスハウザーさん(マーケティング責任者)、クルト・ネフさん、通訳の横山洋子さん

まずはじめにクルト・ネフ氏の個人工房とでも呼ぶべきスペースに案内されました。かつてネフ社で作られた作品の数々が一同に並べられていて、マニアならずともよだれの出そうな空間でした。

クルト・ネフコレクションのほんの一部
さて、今年78才になるネフ氏は今だ現役のデザイナーでもあり、現在考案中のおもちゃの試作も数点見せてもらいました。ハンディーキャップのある子の為のおもちゃやら、かつてあった積み木「ピラミィ」の改良型やら、楽器やら、本当に「今だ健在、クルト・ネフ」って感じで、私は感動と共に、自分もヘラヘラしている場合じゃないぞと、つい日頃のていたらくを反省してしまいました。

次に、工場の方へ案内されました。入ってすぐの所には、おびただしい数の塗装前のネフ・スピール。その数、2,300セット分だそうです。

となりは印刷工場。25ミリのキューブにイカモの印刷がされている所でした。ナルホド、4個のパーツを並べた上で「赤・青・黄・黒」の印刷がほどこされる訳か…。

別の場所ではエリプソやセラの組立てが行われていました。エリプソは思った通り自社開発のジグが活躍していました。セラの接着もジグが使われています。ここでそれらの詳細をイラストなりで紹介したいところなのですが、これはいわゆる企業秘密に属する事と思われますので、残念ながらこの程度の表現にとどめたいと思います。

塗装室に近づくにつれてラッカーの強いにおいがしてきました。ちなみに、ヨーロッパでは安全面に配慮して、油性ラッカーは使用不可、全て水性ラッカーが使われます。それでも、吹き付けの作業場近くからは、強いラッカー臭が漂っています。でも、スプレーガンで吹き付けをしている社員を見ると、マスクをしていません。「さあ、遠慮しないでこっちの部屋へはいってくれ。」と彼は言います。それで私達はスプレー室の中に入りました。一歩入った瞬間、ラッカー臭がない事に誰もがビックリ。床に強靱なバキューム(吸い込み)が効いていて、作業員の方へラッカーが舞い上がらないようなシステムになっています。すると、「オイラの身体の事を心配してくれてありがとう。オイラはいたって健康さ。」(日本語ではたぶんこんな感じ)とのこと。

さて、ひと通り工場を見学したあと、現ラインナップのショールームに案内されました。

ネフ社のショールームおなじみの積み木の他に「ドリオ」や「ベビーボール」など、乳児用玩具の数々…。おや、変わった色のセラやダイアモンドがあるぞ、チョコレートで有名な「ミルカ社」のロゴ入りのダイアもある。これらは全て特注品なのです。もちろん、百町森25周年で特注した白黒ダイアも飾られていました。

ジャイアント・ペンデルの大きいこと!

さて、マーケティング責任者のルーティスハウザー氏が、「実は、アイザワのヴィボがシュピールグート*に選ばれたんだ」と言い、その賞状を持ってきてくれました。えっ?!作者の私でさえ知らなかった…。「いやァ、その知らせが昨日ネフに来たんだよ。」との事。んま〜ッ!ビックリ!!私がネフを訪ねる前日にその知らせが届くとは…。やはり何か運命的なモノを感じない訳にはいかない私でした。そして、今回のツアーの参加者の皆さんに、多大なる祝福を拍手と共に受け、感極まるアイザワでありました。

ネフ社のロビーに展示されているヴィボの前で、ネフさんと

さて、ネフ社訪問を終え、ネフさん、ネフ社スタッフと共に昼食をいただきました。おいしいスイス料理に舌つづみをうった後、私は持参した新作のおもちゃの試作品をネフさん達に見てもらいました。「ヴィボ」や「アレーナ」とも仲良しになれる(組んで遊べる)積み木です。ネフさんを始めスタッフの方達にも、まずまず好評で、やがて製品になってゆけばうれしい限りなのですが…。

相沢の試作品を手に、ネフさん、フェルバーさん、ルーティスハウザーさんらとディスカッション

とってもお元気なネフさんと、レストランの前でツーショット

注)シュピールグート(spiel gut)
子ども向き玩具を対象に、品質・デザイン・エコロジーにかなう原材料か、などを評価基準にして、ドイツ優良玩具審議会(教育者やデザイナー、学者、医者)が中心となって選びます。

(相沢)
訪問日/2004年10月7日
所在地/スイス・ツォフィンゲン

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