ドイツの旅99(佐々木)

1999/02/01●長い一日(静岡〜成田〜フランクフルト〜ドレスデン泊)

午前3:45起床。パンと味噌汁を食べて、4:15妻の実家を出る。彼女に車で静岡駅まで送ってもらう。改札口前には、すでに同行する3人(柿田氏、相沢氏、川島さん)が待っていた。私の姿を見て「薄着だねー」と柿田氏。「見た感じはそうだけど、暖かい下着を着てるんですよ」と私。川島さんは結局寝ていないらしい。相沢氏は誰も起こさないよう、そっと家を出てタクシーで来たとのこと。「私だけみんなと別の車両じゃない?」と川島さんが騒ぐ一場面もあったが、それは成田エクスプレスの券だったことが判明。頭の回転の早い彼女には珍しいことで、「ゆうべ徹夜して頭が朦朧としているにも関わらず、回転だけは早いので、とんでもない方向へ飛んで行ってしまうのだ」と男3人で納得する。

4:48サンライズ瀬戸なるザコ寝寝台車で一路東京へ。これが、なかなか面白い寝台車で、普通の寝台車のように4人で1部屋ではなく、大部屋状態で1階と2階に別れていて、隣り同士でお互い顔を見合わせなくてすむように、窓際にちょっとした衝立が付いているだけなのだ。でも、まぁこぎれいでなかなか快適。暖房に加え、床暖房がついているらしく背中が暖かいので、薄い布団でも十分。6:45横浜駅着。あと25分弱で東京に着くので、このあたりから乗客達は起き始めて、着替えたり、身だしなみを整えたり、荷物をまとめたりしている。私もつられて起きる。現在7:00ちょうど。あと8分で東京駅に着くというのに、相沢氏と川島さんはまだ眠っている。大したものだ。仕方がないので、二人を起こす。

7:08東京駅着。柿田氏はあまり眠れなかったとのこと。7:30成田エクスプレスで東京駅発。ゆったりとした席に4人で向かい合って座ってやっと落ち着く。赤と黒のツートンカラーの内装が新鮮でなかなか良い。

8:31成田空港第2ターミナル駅着。パスポートを見せて空港内に入る。荷物のチェックを受けて、航空券を受け取りにカウンターへ。もう一人の同行者である露木さんと合流する。これで、今回の旅行のメンバー5人がそろったことになる。柿田氏、相沢氏は説明を待つこともなく百町森の重鎮(笑)であり、川島さんは百町森の販売管理・会員管理などを担当する重要人物で英語も達者(この3人がいないと百町森の機能のかなりの部分がストップしてしまうのだ。なんと大胆な私たち)。露木さんは、百町森のわらべうたの講習会の先生で、よく静岡にも来ていただいている。話には聞いていたが、露木さんの荷物が少なくて、大きなスーツケースをゴロゴロ転がしてきた我々はびっくり。しかも手荷物は可愛いクマさんの小さな紙袋で、「旅慣れてるなぁ」と一同感心することしきり。ファーストクラスやビジネスクラスの立派なカウンターに比べて、貧相な出店のようなルフトハンザ航空エコノミークラスのカウンターで搭乗手続きをする。しかし、エコノミー格安チケットゆえのこの安さ(成田〜フランクフルト往復+フランクフルト〜ドレスデン片道で9万円弱!!)、文句は言うまい。円をドイツマルクに両替する(レートは1DM=71.57yenで、ドイツに行ってからも大体この程度だったので、以下の記事では1DMはおよそ70円と思って読んでください)。この両替は結構待たされたりして面倒だったので、地元の銀行でやっておいた方がいいと思う(ただし1週間くらいかかる)。最後の日本食(讃岐うどん)を食べてから、免税店で相沢氏はたばこ(ハイライト1個150円は安い!)を、露木さんはお姉さんのための化粧品を買う。しかし、相沢氏はこの旅で2カートン(24箱)も吸うのだろうか?

D15ゲートから飛行機に乗り込む。席は狭めだが、我々は窓際の席を固めて(3人+2人)確保できたのでラッキー。機内サービスで、ドイツの新聞ももらったので、柿田氏は早速ドイツ語の辞典を取り出して、知らない単語を調べ始める。ドイツ語を習っているだけあって、気合いが違う。10:40定刻通り離陸後、ビールを飲んですぐ昼食。魚とホタテをいただく。映画が始まるも、ヘッドフォンの音声がバリバリ言うのであきらめる。川島さんは相沢氏から借りた「ドイツ おもちゃの国の物語」(川西芙沙・文、一志敦子・絵、東京書籍)を読んでいる様子。私は夕べ百町森からインターネットでアクセスして調べたモーツァルトの魔笛の資料に目を通す。ドレスデンのゼンパーオペラの出しものがそれなのだ。チケットは現地で何とかして入手する予定。しかし、ストーリーはめちゃくちゃ変で、「なんじゃこりゃ?」という感じ。ニュルンベルクの民泊先の場所が相変わらずわからないが、ドイツ文化会館でコピーしてきた地図を出して、おおよその場所の検討を付ける。しかし、細かいところは、ドイツに入ってから詳しい地図を入手するしかない。眠って、映画「トゥルーマンショー」を見て(この時は音声OK)、再び食事をしてストレッチをして、いい加減あきあきしてきた頃、ようやくドイツ時間13:45(日本時間21:45)フランクフルト着。12時間強かかる予定が、1時間早く到着した。川島さんはかなり睡眠不足を補った模様。ルフトハンザは全席禁煙(しかも空港もかなりの部分が禁煙)だったため、ロビーの灰皿が置いてある場所に、たばこ吸い達がたむろして、一心に白い煙を上げてたばこを吸っていた。相沢氏も早速この仲間達に合流して満足そうに紫煙をくゆらせていた。ドレスデン行きの飛行機に乗り換えるまでの間、テレフォンカードを買って日本に電話をしたり、女性2人はポストカードを買ったり、私はニュルンベルクの地図を買ったり(この頃から私は地図オタクの疑いがかけられ始める。単にニュルンベルクの民泊先の場所を知りたいだけなのに)。ドレスデン行きの飛行機が遅れて、16:25発のはずが50分遅れの17:15発。国内線なので小さいが、遅れを取戻そうとがんばってくれたのか、18:00ドレスデン空港着。既に日は落ちており雪が積もっている。

大きなタクシーに荷物を積み込んでホテルへ向かう。途中でドレスデン新駅の脇のガード下をくぐる際に、露木さんが「なんだか怖い」とつぶやく。建物の一つ一つが古めかしく、外壁が黒ずんでいて、窓の明りがみんな消えているからだそうだ。言われてみれば確かにそうだが、旧東ではこの時間にはみんな家に帰ってしまうのかもしれない。ホテル(hotel ibis Dresden Konigstein Betriebs)に到着。男性は3人で1部屋。女性2人も1部屋。我々は柿田氏持参の湯沸かしとティーバックで緑茶を飲んでなごむ。ダブルベッドと小さいシングルベッドという組み合わせで、アミダくじで場所を決める。結局、相沢氏と柿田氏はダブルベッドで、私はシングルベッドになる。ラッキー。女性は眠ることにしたので、19:40ごろ男3人で外へ出かける。

ホテルのすぐそばの本屋(BUCH & KUNST)に入って物色。ドレスデンはケストナーの出身地だけあって、ケストナーのコーナーがある。柿田氏は早速ケストナーのビデオを前に「このビデオ、日本に持って帰って見ることができる?」と私に質問。「ヨーロッパのビデオはPAL方式と呼ばれていて、日本のNTSC方式とは異なっているので、そのままでは見れないけど、専門のビデオダビング屋へ持っていけば、変換してもらえますよ。」と私が説明すると、柿田氏納得して2本ほど購入する。相沢氏もガロ風の漫画を見つけて、かなり気になっていたようだが購入せず。20:00閉店なので店を出て中央駅へ。雪が積もっているので歩きにくい。

駅で2月3日のニュルンベルク行きの電車の予約をする。柿田氏のドイツ語が通じる通じる。この旅は大船に乗った気分だ。私が気になっていたこと("Snacks and beverages available on train"という表記が、食料持ち込み可という意味なのか食堂車があるという意味なのか)をカウンターの方に英語で尋ねたところ、彼女は英語を話せなかったので、その場に居合わせた女性のお客さんが、うまく翻訳してくれた。Danke(ありがとう)。明日の夜のオペラのチケットを取るために、ゼンパーオペラSemperoper(別名ザクセン州立歌劇場Sachsische Staatsoper:建設者ゼンパーの名前を冠するこの劇場は、1816年〜26年の建設。度重なる火災や戦災に見舞われた建物の再建が完成したのは、1985年)へ行くことにする。

寒いし雪が積もっているので、トラム(市電)で行くことにして、そばにいた若者に行き方を尋ねる。11番線に乗って、postplaz(郵便広場?)駅で降りればよいとのこと。さっきの女性といい、今の若者といい、非常に礼儀正しく親切に教えてくれる。ありがたいことだ。言われた通りに、postplatz駅で降り、降り積もった雪の中を歩く。Zwinger宮殿や教会の前を通り、ゼンパーオペラへ向かう。どの建物も、歴史を感じさせるが、その装飾の荘厳さに「なんでここまで?」と私なんかは思ってしまうのであった。ゼンパーオペラでチケットについて尋ねたら、明日の朝10:00に向かいの建物に行けば買えるかもしれない、でも明日のプログラム(モーツァルトの魔笛)は人気が高いので難しいだろうとのこと。しかし、我々は明日の朝早々に、ザイフェンに出かけなればならない。

あきらめかけたところで、たまたま我々の近くでたばこを吸っていた人(たぶん幕間の休憩なのだろう)が、遠くに見えるホテルを指差して「あのホテルなら、客用に確保してあるチケットの余りを4時ごろから売ってくれると思う」という裏情報を教えてくれた。もし、早く帰ってくることができたら、そのホテルに行ってみることにする。ゼンパーオペラの前にある喫茶店で、1つのポットの紅茶を3人で分け合って飲みながら、相沢氏が「さっき、ホテルのことを教えてくれたおっさんは親切だったな。やはりたばこ吸いに悪い奴はいない」とうそぶく。話をしながらだんだん眠くなってくる。丸一日、仮眠しかとっていないわけだから眠いのも当然である。

「ところで、そのホテルの名前ってなんだったっけ?」 「ドイツ語だったから、良くわかんない。確か、ホテルなんとかウーとかアーだったと思う」 「そうそう、ウーパールーパーみたいな名前だった」

これで本当にチケットは取れるのだろうか?ホテルに戻って、湯船につかれないことを残念に思いつつ、便器のとなりの小さな洗面台のようなもの(高さは便器と同じ。たぶんビデというものだろう)に湯を張って、足を暖めて22:30(日本時間6:30)眠る。

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