PECSとAAC

自閉症児と絵カードでコミュニケーション


  • 自閉症児と絵カードでコミュニケーション―PECSとAAC
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自閉症をはじめとした、話し言葉によるコミュニケーションに重度の困難のある子どもや大人の人に対する拡大・代替コミュニケーションシステム(AAC)が、注目度を増している。本書では、絵カードを使ったPECSトレーニングとその展開の仕方が、わかりやすく解説されている。

目次

  • 第1章 コミュニケーションとは何か?
  • 第2章 コミュニケーションというコインのもう一つの面:理解
  • 第3章 話すことができないのか? コミュニケーションができないのか?
  • 第4章 なぜ彼女はそうしたのか? 行動とコミュニケーションの関係
  • 第5章 拡大・代替コミュニケーションシステム
  • 第6章 絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS):最初のトレーニング
  • 第7章 PECSの上級レッスン
  • 第8章 理解を促すための視覚的方略の活用

私(アンディ・ボンディ)がカートのことをはじめて聞いたのは、地域の子ども病院に勤めている友人からでした。彼は次のような話をしました。「私の病院のスタッフは、その3歳の男の子の相手をするのに防具に身を包むんだ。ヘルメットをかぶり、肘や膝や手首にも防具を着けるんだ」。どうしてそんなに防具を着けるのかと私が尋ねると、その友人は「その子をその子自身から守ってやるためさ!」と答えました。私も自傷をする子どもはそれまでたくさん見てきましたが、そのように小さい子はいませんでした。彼は翌日、私たちの学校にやってくることになっていました。

カートと一緒に学校にやってきた母親はとても優しそうな人に見えましたが、不安そうな表情も浮かべていました。彼女は私たちに次のようなことを話しました。カートはまだ話せないこと、好きなことはたくさんあるが、それらをほとんどいつも一人でしていること。そして、彼女がカートの「爆発」について話し始めたとき、彼は母親の膝の上で静かにしていましたが、突然小さな音を立てて膝から下り、硬いタイルの床に自分の額をドンと打ちつけたのです。私が捕まえようとすると、ドアを目がけて走り出しました。何とか捕まえて抱きかかえると、彼はすぐに私の顔を引っ掻き、あごひげを引っ張りました。私は彼を抱きかかえたまま、彼の手が私の顔から離れるように、彼の身体を逆向きにしました。そうすると今度は、私のお腹を後ろ向きのまま蹴り始めたのです。たまりかねた私はカートを下ろしたのですが、すぐさま彼はジャンプして膝から床に落ちました。そして、ドアに顔面からぶつかっていき、外に逃げていってしまいました。これらは、たった1分間の出来事でした。その間、母親は静かに座り、どうしてよいかわからないといった様子でした。この部屋にいた他の専門職たちもみな同じ様子でした。

ここで紹介した場面では、何が問題でしょうか? カートは自閉症と診断された幼児です。3歳になっていますが、まだ話すことができません。コミュニケーションの困難が、彼の行動問題と関係していたのでしょうか? 彼の行動問題が、コミュニケーションの困難に影響していたのでしょうか? 彼のコミュニケーション困難は、話す能力がないことだけによって起きているのでしょうか、それともこの問題はもっと根が深いのでしょうか? そして、彼の母親、家族、専門スタッフが、カートを助けるためにどのような方法をとることができるのでしょうか?  私たちが本書を執筆した目的は、自閉症スペクトラム障害の人を含め、カートのような話せない子どもや大人たちが示すコミュニケーションの困難について、両親や専門職の人たちに理解を深めてもらうことです。本書の前半では、言葉を用いない人たちの特徴のいくつかを説明し、コミュニケーションの理解について、私たちのアプローチを具体例をあげながら紹介します。また、コミュニケーションとさまざまな行動問題との関係についても解説します。続いて、手話の使用やそれほど公式なものではないかもしれませんが身振りの使用、絵やシンボルを用いたシステムなど、いくつかの介入方法を紹介します。そこで紹介するものの中には、ローテクなもの(写真や描画を利用)からハイテクなもの(音声出力装置などの電子機器を利用)まであります。またそれらの方法を紹介しながら、そのアプローチがその子どもや大人に適しているかどうかをアセスメントする方法も説明します。最後の3章では、視覚的手がかりを用いて指示の理解を促進する方法や、「待つこと」の学習に関連した問題や移動の問題を取り上げます。また、これらの方法がさまざまな動機づけ方略の有効性を高めることについても説明します。  コミュニケーションのための話し言葉の獲得が他の方法では困難な子どもたちを支援するために、私たちが本書を執筆した理由は何だったでしょうか? その答えを考えてもらうために、カートの後日談を紹介しましょう。

あれからカートは、公立学校で実施されている集中的な特別訓練プログラムに毎日通うことになりました。担当となった教師たちはまず、カートが好きな物や、彼が周囲に注意を向けるようにするために有効なやり方を書き出し、整理しました。カートは他の人が言うことやすることを模倣する学習が必要なのに、このプログラムの開始時点で、彼はまだこれらのスキルを獲得していないことは明らかでした。最初の数日間は、絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS:the Picture Exchange Communication System)の訓練が実施されました。第1回の訓練セッションで、カートは塩味ビスケット(彼の好物)の絵カードを教師に落ち着いて手渡せるようになりました。この訓練は、教師からの問いかけは一切ない形で実施されました。つまり、カートは教師がビスケットを持っているのを見ただけで、自発的にその絵カードを手渡せるようになったのです。続く2、3日の訓練で、彼は他の好物を要求するために、それぞれの絵カードを手渡すことを学習しました。

次に彼は、単文を作るために、台紙に2枚の絵カードを並べることを学習しました。さらに、要求する際にある属性を明確にすることも学習しました。たとえば、「大きなビスケットが欲しい」といったような形でコミュニケーションできるようになりました。このように、物を要求する新しい方法を学習しながら、教室の中で簡単なことを教師に伝える学習もしました。この時点で、両親は家庭でもPECSを導入し、カートが家族とコミュニケーションできるようにしました。カートは学校でも家庭でもとても落ち着いた状態になり、ほんのまれにしかかんしゃくは起きなくなりました。なぜなら、いまやカートは人に自分の欲しい物を伝えるための、効果的で簡単な方法を身に付けたのですから。

カートのように非言語コミュニケーションシステムを使うと、話す学習が妨げられるのではないかと、心配する人もたくさんいます。この問題については本書の中で詳しく述べますが、ここで言えることは、視覚的なシステムが話す能力の発達を妨げたり抑制することを示す証拠はないということです。逆に、視覚的なシステムを用いることによって、話す能力の発達にもよい影響があると示唆する研究結果が増えています。ここで紹介したカートは、まだ話せるようにはなっていませんが、効果的なコミュニケーションができるようになりました。しかし、本書の重要な目的は、必ず話せるようになる方法を強調することではないのです。本書では、子どもたちが効果的なコミュニケーションができるように支援する方法を扱っているのです。

私たちが強調したいのは、機能的コミュニケーション(functional communication)、すなわち、直接強化子(欲しい物)や社会的強化子(誉められたり、好きなことをしてもらう)を手に入れるために他の人に直接働きかける能力を、子どもたちが学習するよう支援することです。次の表は、私たちが特に重視している機能的コミュニケーションスキルです。

子どもたち(大人も)が機能的コミュニケーションスキルを獲得すれば、彼らの生活(彼らの家族や教師の生活も)は今よりもはるかに豊かになるはずです。

(出版社サイトより)

商品詳細

著: アンディ・ボンディ/ロリ・フロスト
訳: 園山繁樹/竹内康二
寸法: 21×15cm
内容: 224ページ
製作: 二瓶社
初版: 2006年07月31日

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