自分を育てる読書のために


  • 自分を育てる読書のために/脇明子他
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中高生に本を手渡す大人を勇気づけてくれる

著者の一人、脇明子さんは大学教授で、「読む力は生きる力」「物語が生きる力を育てる」などの著書や、「オタバリの少年探偵たち」などの訳書がある方です。もう一人の小幡章子さんは、脇さんの元で児童文化学を学び、脇さんが代表を務める「岡山子どもの本の会」で活動したのち、岡山県の中学校に学校司書として3年間赴任されました。その司書時代の記録をもとにした実践レポートです。

笑いと涙の図書室日記

実践レポートとか事例報告とか聞くと、いかにも面白くなさそうですが、一気に読んでしまいました。一人一人に「ぴったりの本」を見つけようとする小幡さんと中学生たちが織りなす図書室日記といった味わいです。中学生とのやりとりが丁寧に生き生きと描かれているので、読み物としても楽しめます。「先生、うち、あれが好きじゃった!」という子どもたちの言葉の躍動感。好きな本と出会えた子ども達の喜びが伝わってきます。例えば…

分厚い本に抵抗感を持つモトコさんに、ファージョンの短編集「天国を出て行く」を手渡したところ、最初の短編が「とりわけとっつきにくいもののひとつ」だったため、挫折してしまいました。そこで、小幡さんはあるお話のところに付箋をつけて、このお話から読んでみてと提案しました。少し難しい部分もあったので、大筋も説明して。

一週間後、本を手にして図書室に現れたモトコさんに、内心どきどきしながら、「本、むずかしい?」とたずねてみたら、モトコさんはぱっと明るい顔になり、「読めとるよ! いま、ここー」と、本を開いて見せてくれました。どうやら、本を持参したのは返却するためではなく、どんなに楽しんでいるかを報告するためだったようで、「いまな、奥さんが池のごみ片づけとって、人形踏んだんよ!」と興奮気味です。「このあいだは、わけわからんって言ってたけど、今度はどう?」とたずねてみたら、モトコさんは大満足という顔で、「うん、これがいっちばん、おもれーわ!」と教えてくれました。(第4章 苦手意識が強いときには)

ほかにも「指輪物語」の好きな人物のエピソード、「みどりのゆび」の朗読のエピソードなど、思わず胸が熱くなって、じ〜んとくるところが何度もありました。まさに主人公と一体化して物語に入り込んでいる感覚。読みながら、元気をいっぱいもらいました。

もちろん役にも立ちます

たくさんのエピソードを紹介しながら、子どもへの読書支援のアプローチが具体的に描かれています。「ぴったりの本」を見つけるヒント、手渡したあとのつまづきや停滞を乗り越えるヒント、本が苦手な子へのアプローチといったテーマごとに整理されています。小幡さんが手探りで編み出したものだけに、貴重でかつ実践的といえます。中高生の子を持つ親としても、子どもに本を手渡すヒントがたくさんありました。

私が一番面白く感じたのは、長編を手渡す時に「このページまで読めばいいから」と付箋を貼る方法です。確かに、長編だと最初の部分で、物語の舞台や登場人物の見取り図が頭の中に描かれます。そのあとで、物語が動き始めます。動き出せば、あとは結末に向かって自然に読み進んでいけます。そこで小幡さんは、その分水嶺ともいえるポイントに付箋を貼って渡すわけです。そこまで読んだら、先を読まずにいられなくなるという絶妙のポイントに…。

中高生に本を手渡す大人に。そして中高生の親に

学校司書はもちろん、本を手渡すお仕事をされている方に、また学校の先生にもぜひ読んで欲しいです。参考になるヒントがきっとあると思います。

親としては、こんな先生が自分の子どもが通う学校にいてくれたらいいのに、と思いましたが、なかなか難しいとも思います。親としてできることは、この本を参考にしながら、自分の子どもに本を手渡すことではないでしょうか。なお、紹介されている本は、小学校中学年くらいから読めるものもあります。「中高生には簡単すぎる」という思い込みで候補から外さないでください。難し過ぎるよりはやさしいくらいの方がいいと思います。本人の読む力や興味に合わせて、選んであげてください。近くにいる親にしかできない支援だと思います。もちろん、百町森でもお手伝いいたします。

中高生(大学生も)のためのブックガイドとしても使える

この本を読んでいたら、読みたい本がたくさん見つかりました。小幡さんと子どもの会話や、子どもの喜びの反応がリアルに描かれているので、「面白そう!」とついつい読みたくなってしまうんですね。特に、何度も登場する本(「王への手紙」「ふたごの兄弟の物語」「オタバリの少年探偵たち」など)は、読みたくなること必至です。選書も実に素晴らしく、ブックガイドとしても優れています。小幡さんは、図書室の一番目立つところに「お勧めの本のコーナー」をつくり、自分が読んで納得し、自信を持っておすすめできる面白い本を数十冊まとめたそうです。この鍛えに鍛えた本棚の本たちが、この本に登場しているはずですから、内容が濃いのもうなずけます。さらに、巻末には、登場した本のリストが脇さんの解説付きで掲載されているので、これも便利です。

「自分」を強く意識しはじめる思春期に、読書は良きアドバイザーになってくれます。そんな「自分を育てる力」のある本とは、どんなものなのでしょうか。そして、それらを、手軽な楽しみの誘惑にさらされているメディア時代の十代、読書の習慣のない、あるいは流行りものつかっている子どもたちに手渡すには、どうすればいいのでしょうか。

本書では、公立中学校の司書が子どもたちと正面から向き合った笑いと涙の奮闘レポートをもとに、手探りで編み出した読書支援の方法を具体的に紹介します。試行錯誤をくりかえしたエピソードの数々は、どうせ話を聞いてくれないからと及び腰になりがちな大人の背中を力強く押してくれるにちがいありません。(出版社サイトより)

目次

  • はじめに 脇明子
  • 第1章 中学生たちとの日々
    • 私が出会った中学生たち
    • 朝読書から見える中学生の思い
    • 一人ひとりにぴったりの本を
  • 第2章 ぴったりの一冊を手渡すまで
    • 趣味や興味を手がかりに
    • 楽しめなかった理由を探る
    • 二冊紹介して、選んでもらう
    • 学級文庫での出会いも
  • 第3章 つまずきを乗り越えて
    • いっしょに登場人物のおさらいを
    • 「いま、何してる?」を糸口に
    • えっ、ほんと? おもしろそう!
  • 第4章 苦手意識が強いときには
    • 短編集には付箋を貼って
    • 長編でも付箋は強い味方
    • 朗読で聞いたものなら手に取りやすい
    • ためらいを乗り越えさせる友だちのひとこと
  • 第5章 物語を共有する喜びを
    • 「どこが好きだった?」で、物語の共有を
    • 物語の共有が人とつながる糸口に
    • 友だちとの共有にほんの少しのおせっかいを
  • 第6章 波瀾万丈の日々からもらったこと
    • もうひとつの「ふたごの兄弟の物語」
    • とりわけはらはらさせられた大事件
    • 「本読んだら、どんないいことがあるん?」
  • あとがき 小幡章子
  • 本書でとりあげた本

「本書でとりあげた本」より

赤毛のアン、あしながおじさん、アンの青春、イギリスとアイルランドの昔話、海の島、王への手紙、丘の家のセーラ、オタバリの少年探偵たち、鬼の橋、おもしろ荘の子どもたち、影との戦い、風の又三郎、カマキリと月、北のはてのイービク、銀のうでのオットー、グリックの冒険、クローディアの秘密、氷の花たば、少年動物誌、白い盾の少年騎士、スカイラー通り19番地、第九軍団のワシ、太陽の木の枝、宝島、小さな反逆者、小さな山神スズナ姫、地下脈系、チョコレート・ウォー、ツバメ号とアマゾン号、ティーパーティーの謎、天国を出ていく、点子ちゃんとアントン、時の旅人、時計坂の家、飛ぶ教室、とぶ船、トムは真夜中の庭で、ドリトル先生航海記、ドリトル先生のサーカス、ドン・キホーテ、西の魔女が死んだ、二年間の休暇、ニルスのふしぎな旅、800番への旅、光の六つのしるし、秘密の花園、ふくろう模様の皿、ふたごの兄弟の物語、ふたつめのほんと、ベーグル・チームの作戦、冒険者たちホビットの冒険魔法使いのチョコレート・ケーキみどりのゆび、ムーン・ダークの戦い、名犬ラッド、めざめれば魔女、やかまし村の子どもたち、ゆうかんな女の子ラモーナ、雪女 夏の日の夢、指輪物語ライオンと魔女、レイザーバック・フォーミィ 誇り高きイノシシの勇者

商品詳細

著: 脇明子、小幡章子
寸法: 19×13cm
内容: 184頁(並製・カバー)
製作: 岩波書店 (日本)
初版: 2011年06月29日

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