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トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界

「ムーミン」が生まれる土壌となった風刺雑誌

まさに圧巻!!この分厚さ、圧倒的なボリューム感と豊富な図版資料、巻末の註、参考文献、索引だけでもかなりの量になる労作です。「ガルム」は1920〜50年代にフィンランドで発行された風刺雑誌で、若きトーヴェ・ヤンソンが挿絵を描いたことで知られています。ムーミンに関する本を書き続けてきた著者は、ついにそのルーツとも言える「ガルム」、そしてトーヴェに多大な影響を与えた母シグネに辿り着きました。これが全て「好き」の一念から始まったことだと思うと、その思いの強さに敬服してしまいます。

そして、これまでの著作でも感じられた、原作をはじめとする資料の丹念で深い読み込みとそれに基づく考察、という学究的な姿勢は、この本で余すところなく発揮されています。大学教授だから当然ともいえますが、それに加えて、1999年には招聘研究者として、フィンランドのオーボ・アカデミー大学文学研究所に所属して、生の資料に触れられたという貴重な経験が栄養となっているので、その後十年という長い時間を経て誕生したこの本が、多くの資料に彩られているのも頷けます。

カリカチュア雑誌「ガルム」で読みとく二十世紀前半のフィンランドのできごとが本書の記述をみちびく一筋の糸だとすると、もう一筋の糸は母シグネ・ハンマルステン・ヤンソンと娘トーヴェ・ヤンソンというふたりの芸術家の生涯である。天賦の才に恵まれた娘を愛と理解をもって導き、励まし、物心両面でささえた母シグネの仕事を検討しながら、それぞれに独創的な芸術家であった母と娘の絆も描きだしたい。(「はじめに」より)

これほどの労作が、言語や文化の違いを超えて日本で出版された、ということはものすごいことだと思います。内容もさることながら、好きなものを真剣につきつめていけば道は開ける、ということもこの本は示してくれています。(2009年6月11日佐々木)

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著者:
冨原眞弓
発行:
青土社
寸法:
21×15cm
頁数:
460p
初版:
2009年
  • トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界/冨原眞弓
  • 3,800円+税(8%税込4,104円)
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トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界:本の中身
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右ページがシグネ画、左ページの左の絵がトーヴェ画

トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界:本の中身
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カラーの折り込みページ。右がシグネ画、左はトーヴェ画。

トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界:本の中身
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ムーミンファンには興味深い「ガルム」と「ムーミン」の比較。

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