もっとファンタジーを読みたい人に、新旧おすすめの長編ファンタジー
『ハリー・ポッター』刊行以来、ファンタジーを読む子どもが増えました。そのお陰で続々と長編ファンタジーが出るようになったし、それ以前からあったファンタジーも注目され、映画化されることもしばしばです。
今回は今注目の長編ファンタジーの中から、ぜひ読んでほしいものをここでご紹介します。
(コプタ通信2006年7月号より 柿田友広)
小人の冒険シリーズ
編み棒や安全ピン、鉛筆など、たくさん買っているはずなのに、使おうとすると見つからない―そんなことはありませんか。もしそうなら、そのおうちには「借り暮らしの人たち」がいるのかもしれません。
イギリスの、ある古い家の床下に、「借り暮らしの人たち」―身長は15センチほどの小人の一家が住んでいました。小人の少女アリエッティが、その家の男の子に姿を〈見られ〉てしまったことから、スリルに満ちた事件がつぎつぎと起こります。
各話のあらすじ
- 1 床下の小人たち
- イギリスの古い家の床下に、小人の一家が住んでいました。彼らにとって、人間と関係をもつことは絶対にしてはならないことです。けれど、小人の少女アリエッティは、床下の暮らしにあきあきして、外の世界にあこがれ、その家の男の子と知り合いになります。
- 2 野に出た小人たち
- 床下にひっそりと暮らしていた小人たちは、人間に見つかったことで、野原に脱出します。アリエッティは明るい日光や、野イチゴつみを楽しみ、野育ちの小人スピラーと友だちになります。しかし、人間からはなれてくらす戸外の生活は、容易ではありませんでした。
- 3 川をくだる小人たち
- 小人スピラーの助けで、小人の一家は森番の小屋にたどりつき、いとこの家族と再会します。が、ここも安住の地ではありませんでした。下水管を通って外へ出た一家は、やかんにのって川をくだりますが、新しい旅には大きな危険がまちかまえていました。
- 4 空をとぶ小人たち
- 川をはさんで、心やさしいポットさんの村と、見物客めあてのプラター氏の村、2つの模型の村がありました。小人の一家は、ポットさんの家で楽しく暮らすも、プラター氏に誘拐されてしまいます。小人たちは、ゴム風船で気球をつくり、脱出を試みます。
- 5 小人たちの新しい家
- 劇的な脱出をはたした一家はふたたび川をくだり、ようやく静かな古い牧師館にたどりつきました。今度こそ、そこは一家にとって安心して暮らせるすみかになるのでしょうか。小人の冒険シリーズ最終巻。
ナルニア国ものがたり
ディズニーによる映画化で、一躍脚光を浴びることになった「ナルニア」ですが、日本では40年も前から、読み継がれてきたロングセラーのファンタジーです。
7つの物語は独立していますが、全体として「ナルニア」の誕生から滅亡までを描いた壮大な年代記となっています。
品格ある装幀のハードカバー版、コンパクトで廉価な文庫版、ハードカバー版よりひと回り小さくて持ちやすく、挿絵がカラーになったカラー版の3種類があります。
カラー版は、2006年5月31日までキャンペーンをしています。
(2006年3月 佐々木隆行)
あの名作が、改訂新版で登場!
カーネギー賞受賞作を含む、イギリス児童文学不朽の名作が、約40年を経て改訂され、美しい新装版でよみがえりました!なつかしく読みかえされる方にも、新しい読者にもおすすめのシリーズです。(出版社解説より)
大おばあさんのもとで冬休みをすごすために、古いお城のようなグリーン・ノウ屋敷へやってきたトーリー少年。孤独だったトーリーは、しだいに屋敷の不思議な魅力になじみ、300年も前に生きていた子どもたちの存在を、屋敷のあらゆる場所に感じ取るようになるが・・・。
プリデイン物語
プリデイン国の片隅にあるカー・ダルベン。そこの豚飼育補佐のタランは、思いがけずに恐ろしい"角の王"との戦いにまきこまれれてゆくー。武勲に憧れる少年タランの、神秘と魔法にみちた冒険物語。ウェールズの神話・伝説をもとにした、アメリカが生んだ本格的ファンタジー。 タラン少年は豚飼いの平凡な日常にうんざりしていました。馬蹄作りの練習ではなく、剣術の練習をしたかったのです。ギディオンという英雄に憧れていたのです。しかし、この国のことを何でも知っている379歳のダルベンには、そんなタランがもどかしく、「…答えをきいて知るより、答えを探して見つからぬことから、より多くのことを知る場合がある。」などと意味ありげに言ったりします。 ところが、この血気盛んな若者は、ひょんなことから森に入り込み、準備不足のまま英雄ギディオンに会います。ギディオンにお前は誰か訊かれ、答えられないでいると、「みんな、自分が誰なのかを、ひとりで見出さねばならんのだ。」なんて答えるギディオンがかっこいいわけです。 そして、死の国アヌーブンとそれに組する邪悪な角の王との戦いへと物語りはどんどん加速していきます。この話は空想のくにプリデインの善と悪の対立抗争の中で、試練を乗り越え進んでいく成長ファンタジーです。人生が旅だと思えば、タランの旅もいちいち合点がいきます。さりげない大人の役割、気の強いエイロヌイ王女や、頭の足りない毛むくじゃらの生き物ガーギなど、愛すべき仲間と喧嘩したり仲直りしたり…。ウェールズに住むケルト族の古代伝説からヒントを得て作られたというだけあって、舞台の格調高さが嬉しい物語です。(柿田) |
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指輪物語とトールキンの世界
映画「ロード・オブ・ザ・リング」のおかげで、多くの人に知られるようになった指輪物語ですが、昔から根強いファンがいて、長く読み継がれてきたファンタジーの傑作です。「ナルニア国物語」とともに、ファンタジーの双璧と呼ばれることもあります。
私が「指輪物語」の文庫版(旅の仲間 上巻)を買ったのは、ラルフ・バクシ監督によるアニメが公開された1979年ごろでした(表紙が映画のポスターと同じデザイン)。しかし、出だしの「ホビットについて」「パイプ草について」といった解説じみた文章が、なかなか読破できず、結局読めないまま25年(!)近く過ぎてしまいました。
映画の公開に刺激されて、何度目かの挑戦をしたところ、最初の難関をついに乗り越えることができました。フロドが指輪を譲り受けて、物語が動き出すと後はぐいぐいと引き込まれ、フロドが黒い乗手とともに奔流にのみ込まれる上巻の終わりでは、「早く次が読みたい!」となっていました。
ただ、読んでいた時に感じたのは、重苦しさや黒の乗手への恐怖でした。裂け谷に辿り着くまでが、本当に長く苦しく感じられました。映画のようにテンポよく進むという感じではないので、ご注意を(笑)。
指輪物語を読破した後は、その世界をさらに味わいたくなって、「シルマリルの物語」「終わらざりし物語」もたっぷり堪能しました。こちらは、「指輪物語 追補編」を面白がれる方にだけお薦めします。
(2006年4月 佐々木隆行)
「勾玉」
村娘狭也の平和な日々は祭りの晩に破られた。「鬼」が来て手渡した「水の乙女の勾玉」ノ憧れの「輝」の宮で待っていた絶望ノそして神殿で縛められて夢を見ていた輝の末子稚羽矢との出会いが、狭也を不思議な運命へと導くノ。神々が地上を歩いていた古代日本、光と闇がせめぎあう戦乱の世を舞台に織り上げられた、ファンタジー。 | ![]() |