デザインとヴィジュアル・コミュニケーション

デザインに関わる全ての方に

1967年、ムナーリは、ハーヴァード大学・カーペンター視覚芸術センターに招かれて、芸術専攻ではない学生たちのために「ヴィジュアル・スタディーズ」の授業を行った。本書はその講義録だ。

第1部「ハーヴァードからの手紙」では、アメリカでの"プロフェッサー"生活のなかで考えた美術教育をめぐるあれこれを、一流の観察眼とウィットのきいた批評精神でレポートする。

第2部「ヴィジュアル・コミュニケーション」では、実際の講義をもとにした多数の具体例を示しながら、徹底的に形成の原理を分析・解明してみせる。「芸術は技術ではない。技術は芸術ではない」

(出版社解説より)

原書は1968年に出版されました。「40年も前の講義を今出版する意味はあるのだろうか?」と、ムナーリファンの私ですら思います。

でも、実はそれが大ありなのです。

「ヴィジュアル・コミュニケーション」とは聞き慣れない言葉ですが、ムナーリによると「私たちの目が見るものすべて」なのだそうです。その中には、偶発的なもの(例:空を通り抜ける雲)と、意図的なもの(例:のろし、旗)があり、後者は、美的情報と実質的情報の2つの側面を持っていると考えています。

そしてムナーリは、「ヴィジュアル・コミュニケーションはヴィジュアル・メッセージを通じて行われる」と考え、そのメッセージを情報と視覚媒体に分け、視覚媒体をさらに、テクスチャー、フォルム、構造、モデュール、動きという要素に分解します。この本では、これらの要素を軸にして、ムナーリの考察と豊富な図版が紹介されます。

ここまで書いてみると、実に堅苦しい感じの内容に見えますが、そうではありません。ムナーリは、伝えたいことを伝えるために論理化しているだけなんですね。語られる内容は生き生きとしていて、今読んでもワクワクしてきます。そして、豊富な図版!総ページの半分を超える約200ページが図版と注釈で埋められています。これは「」「正方形」「顔!」のような図録集にも匹敵するボリュームです。

原著は「芸術としてのデザイン」「ファンタジア」の原著と同じ出版社Laterza社。前者はデザインが、後者は創造性が主題になっています。また、前者はデザインについての本ということで重複する部分もややありますが、どちらかというとデザイン全般を広く扱っています。この本は、「ヴィジュアル・コミュニケーション」に的を絞って深く掘り下げた内容になっています。

この本の図版を見ていると、「こんな以前にこのアイデアがあったのか!」と驚くことしきりです。木のおもちゃの世界でもそうですが、すでにあるもの、もっと先を行っているものを、今一所懸命作っているなんてこともあります。新しいものを生み出すには、今流行っているものだけでなく、かつて試みられたものや、もっと古典的なものにも学ぶ必要があるのではないでしょうか?

デザインに関わるすべての方に、「とにかくまず読め」とお薦めしたい本です。

(2007年7月 佐々木)

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著者:
ブルーノ・ムナーリ
訳者:
萱野有美
寸法:
19.5×13cm
頁数:
384p
初版:
2006年
原著:
1968年Laterza社(伊)
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立方体を等しいパーツに分割して連結

立方体を等しいパーツに分割して連結

立方空間から抽出された論理的な幾何学フォルム

立方空間から抽出された論理的な幾何学フォルム

バックミンスター・フラーのドーム

バックミンスター・フラーのドーム(左)

ある単純フォルムを回転し、堆積させてできたフォルム

ある単純フォルムを回転し、堆積させてできたフォルム